パレコーウイルスは、手足口病など”夏かぜ”の原因となるエンテロウイルスと同じ、ピコルナウイルスの仲間です。つい最近までは、”エコーウイルス22型、23型”という名前で呼ばれていましたが、研究の結果、エコーウイルス22、23型とエンテロウイルスの間には構造上や遺伝子レベルで大きな違いがあることが明らかとなり、現在では、パレコーウイルス1型、2型と呼ばれています。

  パレコーウイルスは山形県衛生研究所では、2001年に4株、2002年に4株を分離しているのみで検出数が少ないウイルスです。私たちがパレコーウイルスに本当に感染していないのかどうかを調べるために、抗体保有状況を調査しましたので、ここでは結果を公開して報告します。
  山形県では、2002年、同意をえられた県民の皆様(0-4歳:26人、5-9歳:27人、10-14歳:27人、15-19歳:25人、20-29歳:35人、30-39歳:43人、40-49歳:33人、50-59歳:24人、60歳以上:24人、合計264人)の血清を用いてパレコ-ウイルスに対する中和抗体保有状況を調査しました。
 
 
 その結果、全体で94.3%とほとんどの人がパレコーウイルス1型に対する抗体を保有していることがわかりました。この事実は、私たちがほぼ全員、4歳未満の幼少時にパレコーウイルス1型に感染して抗体を獲得し、生涯持ちつづけていることを示しています。

 実際、2001年の4株、2002年の4株が分離された患者さんの年齢を見ると、0歳3例、1歳2例、3歳3例となっており、いずれも4歳未満でした。
 
 パレコーウイルスは、このように私たちが高頻度に感染していながら、検出頻度が少ない(分離数が少ない)のはどうしてなのでしょうか?その理由としては、@分離が難しい、A子どもが感染しても症状が軽いため病院を訪れない、などの理由が考えられます。

 例えば、インフルエンザウイルスにはA、B、C型があります。A、B型は健康上の問題としていつも大きく取り扱われますが、C型はほとんど認知されていません。というのも、C型はほとんどの人が感染していながら、症状が比較的軽いことや分離が難しいことなどから、表沙汰にならないでいるのです。パレコーウイルスとそっくりです。

 今回の調査で明らかになったように、私たちほとんど全員が幼少時にパレコーウイルス1型に感染しています。しかし、幸いにも大きな病気をおこさないために、その存在が知られていません。ウイルスの中には、パレコーウイルス1型のように私たちと平和共存(?)しているものもあるのです。
 
(衛生研究所所報36:58-59,2003参照)
  調査の実施にあたっては、血清をいただいた県民の皆様、保護者の皆様、関連医療施設のスタッフの皆様のご配慮をいただきました。厚く御礼申し上げます。

皆様のご協力どうもありがとうございました