ウイルスと細胞の種類
ウイルスの増殖による細胞の変化(細胞変性効果)
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アデノウイルス
(HEF細胞) 
 色の濃い膨らんだ細胞が特徴的。
アデノウイルス
(HEp-2細胞)
 ぶどうの房様といわれる細胞変性効果が特徴的。
インフルエンザA香港型(MDCK細胞)
  ウイルスが増殖して細胞が完全に破壊された。B型でも同様の細胞変性効果がみられる。
インフルエンザC型(HMV-II細胞)
 大きく見える細胞がHMV-II、小さく長細いのがニワトリ赤血球。ウイルスが増殖したHMV-II細胞にニワトリ血球がくっついている(赤血球吸着反応)。
パラインフルエンザ3型(HMV-II細胞)
 大きく見える細胞がHMV-II、小さく丸いのがモルモット赤血球。ウイルスが増殖したHMV-II細胞にモルモット血球がくっついている(赤血球吸着反応)。
ヘルペスウイルス
(HEF細胞)
 ウイルスが増殖し、すでにすべての細胞が破壊された状態。
ヘルペスウイルス
(VERO細胞)
 丸みをおびた細胞変性像があちこちに散在している。間はまだウイルスが増殖していない正常細胞。
サイトメガロウイルス
(HEF細胞)
 膨らんだ、透明感の高い細胞変性像が細胞から細胞へのゆっくりと拡大していくのが特徴。
エンテロウイルス
(HEF細胞)
 手足口病患者から分離されたコクサッキーA16型の増殖により細胞は完全に破壊された。
エンテロウイルス
(HEp-2細胞)
 コクサッキーB3の増殖により細胞が破壊された。。  
エンテロウイルス
(VERO細胞)
 ポリオウイルス1型の増殖初期像。下の方に正常細胞が残存している。
エンテロウイルス
(RD18s細胞)
 エコー6型の増殖像。完全に細胞は破壊、脱落。
エンテロウイルス
(GMK細胞)
 手足口病患者から分離されたエンテロウイルス71型の増殖像。
RSウイルス(HEp-2細胞)
 小さなシンシチウム(合ほう体)を形成。
ムンプス(おたふくかぜ)ウイルス
(VERO細胞)
 全体に大きなシンシチウム(合ほう体)が広がった。
麻疹(はしか)ウイルス(B95a細胞)
  矢印の先にある、大きく見えているところがウイルスの増殖により形成されたシンシチウム(合ほう体)。周りに小さく見えるのは正常細胞。
  ウイルスが皆さんに感染して病気をおこします。すると私たちは医療機関を通じて患者さんの咽頭拭い液(のどを綿棒で拭ったもの)や便の検体を受け取り、どんなウイルスが患者さんの中でふえて病気をおこしたのかを検査します。たとえば、冬になってインフルエンザが流行した時には、患者さんののどにどのような病原体がいるかを調べます。また、カキの生食の後に食中毒がおこることがありますが、患者さんの便で検査を行うと、小型球形ウイルスが検出されることが多いのです。

  それでは小さな小さな、約1万分の1ミリ程度のウイルスをどのようにして検出するのでしょう?

  まず、ウイルスを電子顕微鏡で直接見ることが考えられます。しかし、十分なウイルス粒子の数がないと見ることができないなどの限界があります。
  もう1つ、ウイルスを増殖させて、間接的にウイルスが存在していることを目で確認する方法があります。ウイルスは生きた細胞の中で増殖するので、ガラス瓶の中で細胞を生かし、患者さんの検体をかけてやります。すると、検体中のウイルスが細胞内で増え、細胞が丸くなったり、細胞が膨らんだり、細胞が融合して大きくなったり、細胞が完全に破壊されてしまったり、形態的な変化(専門的には細胞変性効果とよびます)がおきます。この様子はふつうの光学顕微鏡で見ることができるのです。インフルエンザならイヌの腎臓細胞(MDCK細胞)で増える、麻疹ならリンパ球系細胞(B95a)で増えるなど、ウイルスの種類によって細胞との相性が異なります。また、ウイルスの種類によっては、ニワトリやモルモットの赤血球を吸着させる性質があるため、こうした反応を見てウイルスが増殖していることを調べることもできます(赤血球吸着反応)。このページでは、各種ウイルスが細胞で増殖している様子をとった写真を掲載してみました。皆さんの体の中でウイルスが増殖しているところを想像できましたでしょうか?


皆様のご協力どうもありがとうございました