現在、世界でヒト遺伝子の解析が進められています。私たちに感染症をひきおこすウイルスも
遺伝情報をもっており、年月とともに変化しています。インフルエンザが毎年変異をおこして私たち
の社会で流行を引き起こしているのはその1例です。
 山形県衛生研究所では、山形大学医学部感染症学教室・仙台医療センターウイルスセンター・
国立感染症研究所・東北大学医学部微生物学教室と連携し、流行状況の疫学解明や病原性解析
のために、県民の皆様に病気をおこしたウイルスの遺伝子解析を実施しています。その結果は、
人類の共有財産として蓄積され、山形県はもちろん、日本の、世界の感染症対策・公衆衛生の向上
に役立つものと考えています。
 県民の皆様のご理解とご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

@エンテロウイルス
 
 エンテロウイルスは主として夏かぜをおこすウイルスの仲間です。

エコーウイルス13型

 2000年頃から全世界的に、山形でも2002年に約40年ぶりに流行(再出現)したことが裏づけられました。今後もこうした感染症の再出現がおこるか否か、監視を続けていく必要があります。

関連するHP論文
遺伝子登録番号
VP1:AB128928
エンテロウイルス71型

 夏かぜ(手足口病)の原因ウイルスとして重要です。時に、脳炎などの原因となり、重篤化・死亡するケースがあります。
 山形における観察の結果、1−2年ごとに遺伝子型が変化し、東南アジアにも同様の遺伝子型があることが判明しました。これらのことから、エンテロウイルス71型は東南アジアの広域に分布し、日本と東南アジアとの間で行き来する輸入感染症となっている可能性が高く、注意が必要です。

関連するHP論文1, 論文2
遺伝子登録番号
VP1:AB177809AB177810AB177811AB177812AB177813AB177814AB177815AB177816AB213614AB213615AB213616AB213617AB213618AB213619AB213620AB213621,AB213622AB213623AB213624AB213625AB213626AB213627AB213628AB213629AB213630AB213631AB213632AB213633AB213634AB213635AB213636AB213637AB213638AB213639AB213640AB213641AB213642AB213643AB213644AB213645AB213646AB213647AB213648AB213649AB213650AB433862AB433863AB433864AB433865AB433866AB433867AB433868AB433869AB433870AB433871AB433872AB433873AB433874AB433875AB433876AB433877AB433878AB433879AB433880AB433881AB433882AB433883AB433884AB433885AB433886AB433887AB433888AB433889AB433890AB433891AB433892

A麻疹ウイルス

 麻疹ウイルスは麻疹(はしか)を引き起こす病原体で、ワクチン接種で予防可能です。

麻疹ウイルス

 2004年1-2月に山形県内の中学校で流行がありました。分離されたウイルスの遺伝子型はこれまでに日本で報告されたことがないタイプで、外国から輸入されたと考えられます。麻疹の排除へ向けてさらなる努力が求められています。

関連するHP論文
遺伝子登録番号 N遺伝子:AB186900AB186901AB186902AB186903AB186904AB186905AB186906AB186907AB186908AB186909 H遺伝子:AB186910AB186911

Bアデノウイルス  

 急性気道感染症、咽頭結膜(プール)熱、流行性角結膜炎、感染性胃腸炎などさまざまな病気を
おこします。DNAウイルスなので、RNAウイルス(例えばインフルエンザ)と比べて遺伝子の変異は
少ないと考えられていましたが、今回の山形県における1988-2007年までの20年間の調査でこの
仮説が裏付けられました。

アデノウイルス1型 遺伝子登録番号
ヘキソン:AB433286AB433287AB433288AB433289AB433290AB433291AB433292AB433293AB433294AB433295AB433296AB433297AB433299 ,AB433300AB433301AB433302AB433303AB433304AB433305AB433306AB433307AB433308AB433309AB433310AB433311AB433312AB433313AB433314AB433315AB433316AB433317AB433318AB433319AB433320AB433321AB433322AB433323AB433324AB433325AB433326AB433327
アデノウイルス2型 遺伝子登録番号
ヘキソン:AB433690AB433691AB433692AB433693AB433694AB433695AB433696AB433697AB433698AB433699,、AB433700AB433701AB433702AB433703AB433704AB433705AB433706AB433707AB433708AB433709AB433710AB433711AB433712AB433713AB433714AB433715AB433716AB433717AB433718AB433719AB433720AB433721AB433722AB433723AB433724AB433725AB433726AB433727AB433728AB433729    
アデノウイルス3型


遺伝子登録番号
ヘキソン:AB067659、AB067660AB067661AB067662AB067663AB067664AB067665AB067666AB067667AB067668AB067669AB067670AB067671AB067672AB366402AB366403AB366404AB366405AB366406AB366407AB366408AB366409AB366410AB366411AB366412AB366413AB366414AB366415AB366416AB366417AB366418AB366419AB366420AB366421AB366422AB366423AB366424AB366425AB366426AB366427AB366428AB366429AB366430AB366431
アデノウイルス4型 遺伝子登録番号
ヘキソン: AB433734AB433735AB433736AB433737AB433738AB433739AB433740AB433741AB433742AB433743AB433744AB433745AB433746AB433747AB433748AB433749AB433750AB433751AB433752AB433753AB433754AB433755AB433756
アデノウイルス5型 遺伝子登録番号
ヘキソン: AB434210AB434211AB434212AB434213AB434214AB434215AB434216AB434217AB434218AB434219AB434220AB434221AB434222AB434223AB434224AB434225AB434226AB434227AB434228AB434229AB434230AB434231AB434232AB434233AB434234AB434235AB434236AB434237AB434238AB434239AB434240AB434241AB434242AB434243AB434244AB434245AB434246AB434247AB434248AB434249AB434250AB434251AB434252
アデノウイルス6型 遺伝子登録番号
ヘキソン:AB434175AB434176AB434177AB434178AB434179AB434180AB434181AB434182AB434183AB434184AB434185AB434186AB434187AB434188AB434189AB434190AB434191AB434192AB434193AB434194AB434195AB434196AB434197AB434198AB434199AB434200AB434201AB434202AB434203AB434204AB434205AB434206AB434207AB434208AB434209
関連する論文

Cインフルエンザ

インフルエンザ(特にA型とB型)は変異し、毎年流行を繰り返しています。近年では新型
インフルエンザの出現が危惧されています。山形大学医学部感染症学教室は、特に
インフルエンザC型の研究では世界の最先端を走りつづけています。

インフルエンザB型

 山形の2001年から2003年の分離株を比較した結果、同じシーズンでも異なる遺伝子をもった株が同時に流行し、また互いに遺伝子を組み替える遺伝子分節の再集合が頻繁におきていることがわかりました。

 関連する論文
遺伝子登録番号 
PB2:AB120468AB120469AB120470AB120471AB170472AB170473AB170474AB170475AB170476AB170477AB170478AB170479AB170480AB170481AB170482AB170483AB170484AB170485
PB1:AB120276AB120277AB120278AB120279AB120280AB120281AB120282AB120283AB120284AB120285AB120286AB120287AB120288AB120289AB120290AB120291AB120292AB120293
PA:AB120450AB120451AB120452AB120453AB120454AB120455AB120456AB120457AB120458AB120459AB120460AB120461AB120462AB120463AB120464AB120465AB120466AB120467
HA:AB120486AB120487AB120488AB120489AB120490AB120491AB120492AB120493AB120494AB120495AB120496AB120497AB120498AB120499AB120500AB120501AB120502AB120503AB120504AB120505AB120506AB120507AB120508AB120509
NP:AB120222AB120223AB120224AB120225AB120226AB120227AB120228AB120229AB120230AB120231AB120232AB120233AB120234AB120235AB120236AB120237AB120238AB120239
NA:AB120240AB120241AB120242AB120243AB120244AB120245AB120246AB120247AB120248AB120249AB120250AB120251AB120252AB120253AB120254AB120255AB120256AB120257
M1、BM2:AB120258AB120259AB120260AB120261AB120262AB120263AB120264AB120265AB120266AB120267AB120268AB120269AB120270AB120271AB120272AB120273AB120274AB120275
NS:AB120432AB120433AB120434AB120435AB120436AB120437AB120438AB120439AB120440AB120441AB120442AB120443AB120444AB120445AB120446AB120447AB120448AB120449
インフルエンザC型

 山形と宮城・埼玉・広島で1999-2000年に流行したウイルスの遺伝子を比較した結果、同じ遺伝子構成のウイルスが同時期に全国で流行していたことがわかりました。またこれらの遺伝子構成をもったウイルスは1970-80年代に世界中で報告されており、世界の広い範囲に分布したものと考えられます。

  関連する論文
遺伝子登録番号
HE:AB099410AB099411AB099412AB099413AB099414AB099415
PB2:AB099431AB099432AB099433AB099434AB099435AB099436AB064488
PB1:AB099456AB099457AB099458AB099459AB099460AB099461
P3:AB099530AB099531AB099532AB099533AB099534AB099535
NP:AB099555AB099556AB099557AB099558AB099559AB099560
M1,CM2:AB099579AB099580AB099581AB099582AB099583AB099584
NS:AB099603AB099604AB099605AB099606AB099607AB099608
インフルエンザC型

 山形で1996年と1998年に流行したウイルスの抗原解析と遺伝子解析の結果、これらのウイルスの遺伝子は、異なる2系統のウイルス遺伝子分節が再集合したものと考えられました。

 関連する論文
遺伝子登録番号
HE:AB064397AB064398AB064399AB064400AB064401AB064402AB064403
PB2:AB064417AB064418AB064419AB064420
AB064421AB064422
PB1:AB064425AB064426AB064427AB064428AB064429AB064430AB064431
M1,CM2:AB064432AB064433AB064434AB064435AB064436AB064437AB064438
NS1,NS2:AB064439AB064440AB064441AB064442AB064443AB064444AB064445
P3:AB064448AB064449AB064450
AB064451AB064452AB064453AB064454
NP:AB064469AB064470AB064471AB064472AB064473AB064474AB064475

Dヒトメタニューモウイルス

 ヒトメタニューモウイルスは主に小児の急性気道感染症(いわゆる”かぜ”)を引き起こす病原体で、
2001年に新たに発見されたものです。

ヒトメタニューモウイルス

 2004から2005年に私たちは山形県内で79株のヒトメタニューモウイルスを分離しました。ヒトメタニューモウイルスは細胞での増殖(分離)が難しく、時間がかかるため、これほど多数のウイルスを細胞で分離した報告はありません。同時に、私たちは、県内の小学校や保育園でこのウイルスが流行している状況を明らかにしました。

関連するHP論文
遺伝子登録番号 
F遺伝子:
AB251496AB251497AB251498AB251499AB251500AB251501AB251502AB251503AB251504AB251505AB251506AB251507AB251508AB251509AB251510AB251511AB251512AB251513AB251514AB251515AB251516AB251517AB251518AB251519AB251520AB251521AB251522AB251523AB251524AB251525AB251526AB251527AB251528AB251529AB251530AB251531AB251532AB251533AB251534AB251535AB251536AB251537AB251538AB251539AB251540AB251541AB251542AB251543AB251544AB251545AB251546AB251547AB251548AB251549AB251550AB251551AB251552AB251553AB251554AB251555AB251556AB251557AB251558AB251559AB251560AB251561AB251562AB251563AB251564AB251565AB251566AB251567AB251568AB251569AB251570AB251571AB251572AB251573AB251574


 山形県衛生研究所では、県民の皆様と感染症対策について一緒に考えていきたいと考えております。どうぞ今後ともご協力をお願いいたします。

皆様のご協力どうもありがとうございました