日本では、1960年のポリオ(小児麻痺)大流行を契機に、1961-63年に輸入生ワクチンの緊急投与・小児への一斉投与が行われ、64年以降、春・秋2回の定期接種が確立しました。その結果、ポリオ患者は激減し、現在完全に制圧されている状態にあります。こうした中、日本では、2012年からワクチンも生ワクチンから不活化ワクチンに切り替わりました。1988年にスタートした世界保健機関(WHO)の世界ポリオ根絶計画は着々と進行しており、日本が所属する西太平洋地域では野生株(ワクチン株でなく自然界にある病原性が高い株)ポリオウイルスがないことが2000年9月に宣言されました。このように、日本、及び周辺諸国では野生株ポリオはないとされますが、パキスタンではまだ検出され、旅行者への注意喚起がなされています。現在、世界では2型と3型の野生株は根絶されています。1型野生株の根絶に加え、ワクチン株が変異をして流行するということも発展途上国における課題となっております。日本ではそれらの株の侵入に対して監視を続けるとともに、ワクチンによる予防を継続する必要があるといえます。
山形県では、2021年、同意をえられた県民の皆様の血清を用いてポリオウイルスに対する中和抗体保有状況を調査しました。ポリオ2型についてはウイルスの取り扱いに関する規制が強化されたため、国立感染症研究所において試験を行いました。その結果、全体では、ポリオ1型、2型、3型の中和抗体陽性率は、それぞれ92.8%, 99.0%, 87.9%という結果でした。ポリオ1型と2型に比べて、3型に対する抗体保有率が低く推移している傾向は、全国的な傾向です。過剰な心配はいりませんが、抗体を保有していない方々がいらっしゃることも事実ですので、ポリオ流行国へ行く場合、あるいは心配な場合には、医療機関で抗体検査を受ける、ポリオの予防接種を受ける(ただしいずれも有料です)、ことが可能です。
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