山形県衛生研究所では、感染症予防の観点から、山形県民の皆様が病原体に対してどのくらい抗体をもっているか調査をしています。令和2年度も風しんに対する抗体調査を行いましたので、結果を報告致します。
風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症です。症状は不顕性感染から、重篤な合併症併発まで幅広く、臨床症状のみで風しんと診断することは困難な疾患です。
風しんに感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、出生児が先天性風疹症候群を発症する可能性があり問題となっています。2013年に風しんの大きな流行があり、2013〜2014年は先天性風疹症候群が多く報告されました。2014〜2017年は流行がありませんでしたが、2018〜2019年に再び大きな流行がみられ、先天性風疹症候群の報告も増えています。女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要です。
昭和 37(1962)年4月2日〜昭和54(1979)年4月1日生まれの男性はワクチン接種の機会の違いから風しんの抗体価が低いことが想定されています。日本での風しんの流行をコントロールするためには、特に上記世代の男性についてワクチンの追加接種を行うことが必要と言われています。加えて、日本では男女ともに計画に沿ったワクチンの定期接種を受けて、まず風しんの流行を抑制することが肝要です。
山形県における2020年の年齢層別風しん抗体保有率は下図のようになりました。
調査の結果、男性の45歳以上で8倍未満(グラフの黄色)の方が昨年度に引き続きある程度いることがわかりました。この年代の男性は上記の抗体価が低い年齢群に相当します。
また、妊娠可能年齢にある女性の中に、抗体価が8倍未満(グラフの黄色)と8〜16倍(グラフの黄緑色)の不十分な方がおり、昨年度よりも割合が多いことがわかります。
HI価の評価基準
・8倍未満:ワクチン接種推奨
・8〜16倍:確実な予防(妊娠希望者など)には不十分だが、重症化は予防可能
・32倍以上:免疫は十分であり追加接種不要
県民の皆さんが医療機関にお願いして抗体価を検査する場合、ワクチンの追加接種対象者であれば助成を受けることができます。積極的に自分の免疫の状態を確認できるような体制が整ってきています。
風しん追加的対策に係る抗体検査・予防接種について(山形県ホームページ)
妊娠を希望する女性やそのパートナーへの助成が行われている市町村もありますので、各市町村にお問い合わせください。
風しんについても麻しんと同様に日本における排除状態を目指して調査や啓発活動が行われています。排除のためにはワクチンの追加接種・発生動向調査の徹底が大切です。県民の皆様のご協力を引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
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