急増しているアレルギー症を低減するための調査・研究を行っています。
アレルゲンとは・・・
アレルギーの原因となる物質で、多くは分子量が1万から5万のタンパク質(糖タンパク)です。
●アレルゲン(花粉・ダニ・カビ等)の環境中の濃度・季節変動等を調査しています。
★ダニアレルゲンについてこれまで報告されている知見
・家塵(ハウスダスト)アレルギーの方の多くはダニアレルゲンが関係している。
・アレルギーに関係するダニにはコナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどがある。
・ダニアレルゲンは室内では寝室、居間や台所に多い。
★当衛生研究所で得られた成果(詳細はこちらから)
・ダニアレルゲンの空中浮遊時間を調べた。
a 掃除機かけなどで家塵を舞い上げると多くなった。
b 窓を開放して掃除機をかけると15分後にはダニアレルゲンは空中から消失した。窓を閉めて掃除機をかけると15分後でもダニアレルゲンはみられた。
ESRラジカルイムノアッセイ法による室内環境中ダニアレルゲン(Der p 1、Der f 2)の測定: 安部悦子、高橋裕一、青山正明、第58回日本アレルギー学会秋季学術大会、2008年11月27日
●環境アレルゲンの高感度測定法の開発に取り組んでいます。
★論文業績(2007年-2008年) 1 アレルギー誌:[目的] 空中抗クラドスポリウム属抗原(Clad)をニトロセルロース膜に転写し、免疫化学的に処理することでCladの胞子数を計数する方法を開発する。開発した方法を使って空中Cladの季節変動を調べる。[方法] バーカード型捕集器からの試料をニトロセルロース膜に転写し、ブロッキング後にClad抗血清で処理,続いてアルカリホスファターゼ標識抗ウサギIgGで処理し、膜上の酵素にBCIP/NBT基質を反応させ紫色のスポットを得た。[結果] Cladの胞子は中央が濃く周囲が薄い紫色のスポットとして目視できた。Cladの胞子は春と秋にピークがみられた。1日のうちでは午後から夜にかけ多く飛散する傾向がみられた。気象四要素と空中Clad数との関係を調べたところ、いずれの要素とも強い相関はみられなかった。[結語] 空中Clad胞子を免疫化学的に処理し、ニトロセルロース膜上で紫色のスポットとして目視できるようになった。Cladの胞子は春と秋に、1日では、午後から夜にかけ多くみられた。 2 Aerobiologia誌:イネ科花粉症患者はさまざまなイネ科植物の花粉に感作されている。本研究では、当地方で空中飛散に寄与していると考えられるイネ科花粉の一つであるカモガヤ花粉についてその空中抗原量を免疫学的に定量する方法を検討した。ラジカルイムノアッセイ法を用いればカモガヤ花粉の1個に含まれる抗原の1/20の量が検出できた。当地方の空中イネ科花粉の多くはイチゴツナギ属に属し、相互に強い交差反応性を有するので、カモガヤ花粉を指標にすることで、有用な情報を提供できると考えられる。 3 Allergology International誌:日々の空中スギ花粉抗原(Cryj1)をラジカルイムノアッセイ法で定量し、同一地域に居住する人の症状との関係を調べた。患者の中にはスギ花粉が飛散開始する前から発症する患者がいることがわかった。ここで得られたデータをもとにスギ花粉が飛散開始する前に検出される微量のCryj1を測定し情報化することで住民に役立つ情報を提供できると考える。 |
★最近の成果
空中に飛散しているスギ花粉アレルゲンをきわめて簡単に検出できる方法を開発しました。(高橋裕一,青山正明:ラテックス凝集反応を利用した空中Cry j 1の簡易測定法の開発,アレルギー,55(1),28-33、2006.)試料抽出液の倍々希釈系列を作り、スギ花粉アレルゲンに特異的な抗体で標識したラテックス粒子を反応させると、左写真のような凝集パターンがみられます。
この図から、4月5〜6日に多くのスギ花粉アレルゲンが飛散したことが一目でわかります。