山形県では、2002年6月11日に採取された0歳女児(急性気道感染症)の咽頭拭い液から初めてE13を分離しました。さらに、髄液としては、6月19日に採取された0歳女児(無菌性髄膜炎)の検体から、初めてE13を分離しました。以後の月別分離状況、年齢構成、臨床診断は、右図に示したとおりです(2003年1月8日現在)。
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また、2001年に集められた血清(0-4歳30件、5-9件25件、10-14歳20件、15-19歳39件、20-29歳33件、30-39歳24件、40-49件21件、50-59歳21件、60歳以上21件)について、E13山形分離株を用いて県民のE13に対する中和抗体保有状況を調査した結果は右図のようになりました。 |
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E13に対する山形県民の中和抗体陽性率は、50-60歳以上代で57.1〜61.9%と40歳代未満に比べて明らかに高くなっていました。エンテロウイルス感染症は基本的には小児の病気であることから、50歳代以上の抗体陽性のヒトたちは、小児期にE13に感染して抗体を獲得し、その抗体が現在まで存続していたものと考えられます。したがって、50歳代以上のヒトたちが小児期を過ごした1950年代頃までは、おそらくE13は山形のコミュニティの中で流行をおこしていたことが想像できます。福井県や広島県でも年齢別抗体陽性率は同様の傾向を示しており、このことは日本全国で1960年代以降、E13による感染症の流行が無くなっていったであろうことを示唆しています。つまり、1950年代頃まで山形でE13感染症の流行がありましたが、その後消失し、2001-02年頃に再興感染症として再出現して流行したと考えるのが妥当といえましょう。この考え方はこれまでの発生動向調査によるE13の分離状況とも合致しています。
2000年前後のE13の出現は世界中で観察されている現象です。この現象を再興感染症の1つとして山形で観察し報告したことは、世界でおこっている感染症が山形でもおこりうるし、また逆もしかりということの証左の1つです。ですから世の中の感染症情報が入ってくるのを待っていればそれですむともいえますが、山形でいち早く感染症の流行を捕らえて世界に発信することが可能ともいえるのです。皆様ならどちらの方法をとりますか?私たちは可能な限り後者の方針をとりたいと考えています(Journal of Infection 47:243-247,2003参照)。 |