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季節性コロナウイルス感染症は冬に流行する

季節性コロナウイルスとは?

みなさんは、2020年に世界的大流行を引き起こした新型コロナウイルス以外に、人に風邪を引き起こすコロナウイルス(以下、「季節性コロナウイルス」)が4種類いることをご存じでしょうか?それらウイルスは、ヒューマン コロナウイルス(Human Coronavirus; HCoV)-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-229Eと呼ばれており、古いものでは1960年代には発見されていて、既に人類と共存しています(下表)。

日本で発生しているコロナウイルス感染症の原因病原体
 種類  学術名  発見年  グループ
 新型コロナウイルス  SARS-CoV-2  2019年  ベータ
 季節性コロナウイルス     HCoV-OC43  1960年代  ベータ
 HCoV-229E  1960年代  アルファ
 HCoV-NL63  2004年  アルファ
 HCoV-HKU1  2005年  ベータ

新型コロナウイルス感染症は、無症状の方もいる一方、重症化したり亡くなってしまう方もいる恐ろしい感染症と認識されています。一方で、季節性コロナウイルス感染症は、発熱、鼻咽頭炎などの軽い症状が中心とされていますが、風邪のウイルスとして片付けられてしまうことが多く、これまであまり研究されてきませんでした。

季節性コロナウイルス感染症が流行する季節を調べてみた

山形県衛生研究所(以下、「当所」)では、季節性コロナウイルスについて10年以上研究を続けてきており、この度「季節性コロナウイルス感染症はいつ流行するのか?」という疑問を解決するために、山形県の10年間(2010年1月~2019年12月)の季節性コロナウイルス感染症の患者発生状況を調査しました。

調査には、山形県山辺町(やまのべまち)にある山辺こどもクリニックにご協力いただきました。毎週、急性呼吸器感染症と診断された患者様から採取した呼吸器検体およそ15~25検体を当所に提供いただきました。それら検体について、季節性コロナウイルスだけが増えるPCRを実施し、検体中に季節性コロナウイルスがいるかどうかを調べました。

下の図は、10年間で調査した15歳以下9,122検体の季節性コロナウイルス検出結果です。4種の季節性コロナウイルスが検出されたのは、722検体(7.9%)でした。特に、図の一番上のTotal(4種のウイルスの合計)を見ていただくと季節性コロナウイルス感染症は冬に多そうだという印象を持っていただけると思います。


DOI https://doi.org/10.7883/yoken.JJID.2020.525(日本語の説明を追加)

季節的な傾向をわかりやすくするために、下の図に月ごとの結果を示しました。(a)の線グラフで、10年間の各月で800検体前後の検体を調べたことがわかると思います。(b)はそれら800検体前後の月ごとの検体のうち、4種の季節性コロナウイルスが検出された検体の検出率を示しました。12~4月にかけて検出率が高く、特に1~3月は15%を超える検体から季節性コロナウイルスが検出されていることがわかります。このことから、山形県では季節性コロナウイルス感染症が冬に流行していた点がおわかりいただけると思います。


DOI https://doi.org/10.7883/yoken.JJID.2020.525(日本語の説明を追加)

なぜ、季節性コロナウイルス感染症は冬に流行するのか?

残念ながら、今回の結果からは、なぜ季節性コロナウイルス感染症が冬に流行するのかはわかりません。この疑問に関しては、今後のウイルス学などの基礎研究者の方々の研究結果により解明されることを期待します。

新型コロナウイルス感染症も冬に流行するのか?

今回の研究結果からは、新型コロナウイルス感染症が冬に流行すると言うことはできません。しかし、季節性コロナウイルス感染症が冬に流行していたという事実から、新型コロナウイルス感染症も冬に流行してもおかしくないと予想することはできます。人間は、地球上で珍しく先を見越して準備をすることができる生物です。冬季の新型コロナウイルス感染症の流行を見据え、以下のような準備を進めておくことが有効な手立てになると考えられます。
  1. 日ごろから、新型コロナウイルスの感染リスクが高い地域・施設を把握しておき、利益が不利益を上回る場合を除いては、感染リスクが高い地域・施設を訪問しない。
  2. 家族が新型コロナウイルスに感染した際に、誰がどのような役割を担うかをあらかじめ決めておく。
  3. 会社で体調不良者が出た場合の消毒などの対応や人員配置をあらかじめシミュレーションしておく。
参考として、家庭や会社における新型コロナウイルス対策についてわかりやすくまとめた資料を以下にご紹介します。

                 

おわりに

今回、 山形県における10年間にわたる研究結果から、季節性コロナウイルス感染症が冬に流行する点をご紹介しました。本記事が、季節性コロナウイルス感染症や新型コロナウイルス感染症流行の予防に少しでも役立てば幸いです。

なお、本研究は、山形県衛生研究所・山辺こどもクリニック・山形大学大学院医学研究科感染症学講座の共同研究として実施され、2020年7月に国立感染症研究所発行の学術誌に受理されました。論文の詳細につきましては、以下をご参照ください。

Kenichi Komabayashi and Junji Seto et al. Seasonality of human coronavirus OC43, NL63, HKU1, and 229E infection in Yamagata, Japan, 2010–2019. Jpn J Infect Dis. 2020;73:394-397.

公開論文は、J-STAGEホームページからご確認いただけます。

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