最終更新日:2022年6月2日
目次
- COVID-19時空間三次元マップ公開の目的
- 三次元マップの内容説明・利用方法
- 2022年1月~3月上旬のクラスター発生状況
- 過去の流行状況
- 山形県のCOVID-19の流行を抑えていくために
- 更新履歴
1. COVID-19時空間三次元マップ公開の目的
山形県衛生研究所では、公衆衛生を担う研究機関という使命のもと、東北大学大学院環境科学研究科(https://nakaya-geolab.com/)と共同で、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の県内発生状況を時空間的に俯瞰(ふかん)できるCOVID-19時空間三次元マップ(以下、三次元マップ)を開発しました。① 山形県におけるCOVID-19発生の時間的推移と地理的拡大状況を同時に示すこと、② 得られた結果を分析し今後の山形県における新型コロナウイルス感染予防対策に生かしていくこと、を目的として、山形県内の感染者情報を公開しています。
なお、本情報は、これまでの感染者の発生状況を示したうえで今後の感染者の発生を抑えていくことを目指して公開しています。したがって、誹謗(ひぼう)・中傷(ちゅうしょう)・詮索(せんさく)の目的で本情報を閲覧・利用することは一切おやめください。
2. 三次元マップの内容説明・利用方法
三次元マップは、山形県・山形市のプレス発表資料および記者会見資料を基に作成しています。
(1) 三次元マップ(クラスター描画版)の内容説明
- 平面上に山形県地図に対応する地点を、垂直方向に日付を示しています。
- 点および線の先端が、感染者の居住地市町村を示しています。具体的には、感染者が居住する市町村の代表点から、重なりを避けるために無作為にズラした位置を表示しています(感染者の居住地そのものを示しているわけではありません)。
- 縦軸の日付は、発病日を示しています。無症状や発病日不明の場合は、陽性確定日から5日*引いて示しています。 *本県有症者の発病日から検査確定日までの日数の中央値
- 各クラスターのうち、発病日(推定含む)が最も早かった感染者を色付きの点で示し、その感染者と他の感染者を色付き線で結んでいます。
- 点および線の色は、以下のとおり分類しています。
赤:保育施設クラスター
緑:小学校クラスター
灰色:中学校クラスター
黒:高校クラスター
青:職場クラスター
黄:医療機関クラスター
水色:飲食店クラスター
ピンク:福祉施設クラスター
なお、これら関連性は、疫学調査の結果「推定」されたものであり、確定的な事実ではない点をご了承ください。
(2) 三次元マップの利用方法
三次元マップを動かすためには、無料JAVAソフトウェアが必要です。
- 三次元マップ中でマウスを左クリックした状態で動かすことで好きな角度に回転します。
- マウスのホイール(ミドルボタン)で、三次元マップを拡大・縮小します。
(マウスを用いないスマートフォン等の機器では三次元マップを動かすことができません)
3. 2022年1月~3月上旬のクラスター発生状況
4. 過去の流行状況
以下の年月または画像クリックにより、別ページで過去の三次元マップが開きます
(ファイル容量が大きいため、地図が表示されるまで時間がかかる場合があります)
- 山形県内第一波(2020年3~4月)では、4つの県外との関連が見いだされ、うち2つは、その後のクラスター形成につながっていました(詳細は、当所ホームページ【論文概要】山形県のCOVID-19第一波 ~山形の新型コロナはどのように広がっていたんだろう?~をご覧ください)。
- 2020年5~10月は、県外との関連のある感染者が散見されたものの、散発もしくは小規模の感染拡大でとどまっていました。
- 山形県内第二波(2020年11月~2021年2月)は、村山地域(内陸側)および庄内地域(海側)それぞれにおいて、関連性不明(過去マップ中に"?"で表示)の感染者が複数観察された後に、急速な感染の広がりがみられました。そのうち、村山地域では、複数の飲食店におけるクラスター発生後、家庭内感染を中心として急激に感染がひろがりました。また、庄内地域では、2つの医療機関において大規模なクラスターが発生しました。
- 山形県内第三波(2021年3~4月)は、3月初旬以降、隣県と関連する感染者が村山地域で多数見い出され、その後、飲食店において複数のクラスターが発生しました。しかし、2021年3月22日に山形県・山形市「緊急事態宣言」が発出されてからは、隣県関連や飲食店関連の感染者は減少していきました。ただし、その後も感染の広がりはなかなか収まらず、特に家庭内感染が多い状態が続きました。その後、介護施設などでもクラスターが発生しました。
- 山形県内第四波(2021年5~6月|第三波と併せて図示)は、ゴールデンウィーク前後に県外との関連を有する感染者が多く見出された後、村山地域および置賜地域(県南部)において飲食店におけるクラスターが複数発生し、その後、家庭内感染を中心とした感染の広がりが持続しました。また、村山地域、庄内地域それぞれにおいて、高校生の感染者が多数見出されました。
- 山形県内第五波(2021年7~9月)は、全国的なデルタ株の流行のあおりを受ける形で全県的に感染が広がりました。
- 2021年10~12月は、散発的な感染者の発生に留まり、非常に静かな時期でした。
- 山形県内第六波(2022年1月~)は、オミクロン株を中心とした、これまでにない流行が観察されています。
5. 山形県のCOVID-19の流行を抑えていくために
I. 第一波~第五波
三次元マップを用いた分析結果から、山形県におけるのCOVID-19の流行は以下のとおりまとめることができます。
上図を踏まえ、今後、本県においてCOVID-19の流行を抑えるカギとなるのが、「山形県外での流行と人の流れの増加の把握」、「飲食店クラスターの発生抑止」、「家庭内感染の予防」の3つと考えられます。
(1) 山形県外での流行と人の流れの増加の把握
- 山形県では、経済的つながりの深い宮城県や首都圏からの感染者の流入が多いため、これら地域でのCOVID-19流行状況を把握することが大切です。
- 人の流れは、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始に増加しやすいため、それらイベントの後の感染者増加に特に注意を払う必要があります。
(2) 飲食店クラスターの発生抑止
- 飲食店は、私たちの食生活を支え、豊かな人生を演出してくれる大切な存在です。しかし、人間が口から食べ物や飲み物を摂取する以上、必然的にマスクを外す行為が生じるため、感染予防対策が難しい業種とも言えます。
- 不特定多数の人々が同じ場所に集うことができることも飲食店の魅力ですが、店内でウイルスが広がった際には原因施設判明までに時間がかかり、気付いた時には感染が広がってしまっている、また利用者に連絡が行き届かないなどの難しさもあります。
- 利用者のできることとしては、少しでも感染のリスクを減らすために、感染対策を徹底しているお店、本県でいえば『新型コロナ対策認証施設』を利用することがまず考えられます。併せて、お住まいの地域で感染者が増えている時期は飲食店の利用を控えることも必要かもしれません。
(3) 家庭内感染の予防
- 山形県では、感染経路が判明している感染者の46%が家庭内で新型コロナウイルスに感染しています(2021年10月15日現在、プレスリリース情報を基に算出)。
- 感染の可能性がある家族(例 COVID-19が流行している県外を訪問した、COVID-19が流行している都道府県から帰省した、地域内でCOVID-19が流行している時に飲食店を利用した)がいる場合には、万が一を想定して家庭内での感染を防ぐための徹底的な対策が必要です。
- 具体的な対策につきましては、当所ホームページ【論文概要】山形県のCOVID-19第一波 ~山形の新型コロナはどのように広がっていたんだろう?~をご覧ください。
II. 第六波
2021年まで(第一波~第五波)と、2022年1~5月(第六波)の年齢群別感染者数、クラスター発生状況は以下のとおりでした。
年齢群別新型コロナウイルス感染者数
年齢群
|
2020年3月~2021年12月
(第一波~第五波期間含む)
|
2022年1~5月
(第六波期間含む)
|
感染者数
|
%
|
感染者数
|
%
|
10歳未満
|
282
|
8
|
5,147
|
21*
|
10代
|
503
|
14
|
4,050
|
16*
|
20代
|
589
|
16*
|
2,822
|
11
|
30代
|
470
|
13
|
3,892
|
16*
|
40代
|
549
|
15
|
3,504
|
14
|
50代
|
467
|
13*
|
1,823
|
7
|
60代
|
286
|
8*
|
1,515
|
6
|
70代
|
241
|
7*
|
995
|
4
|
80代
|
156
|
4*
|
697
|
3
|
90歳以上
|
63
|
2
|
440
|
2
|
計
|
3,606**
|
100
|
24,885
|
100
|
乳児・幼児・小学生は10歳未満、中学生・高校生は10代で計上しています。
*統計解析(残差分析)で有意差あり(P <0.05)。
**期間中の3607人から年齢非公表の1人を抜いた人数です。
新型コロナウイルス感染症クラスター発生状況
施設名
|
2020年3月~2021年12月
(第一波~第五波期間含む)
|
2022年1~5月
(第六波期間含む)
|
クラスター数
|
%
|
クラスター数
|
%
|
保育施設
|
8
|
13
|
91
|
30
|
小学校(学童施設含む)
|
0
|
0
|
47
|
16
|
中学校
|
1
|
2
|
8
|
3
|
高校
|
8
|
13
|
37
|
12
|
介護施設・高齢者施設
|
10
|
17
|
39
|
13
|
事業所
|
9
|
15
|
31
|
10
|
病院・医療機関
|
3
|
5
|
14
|
5
|
飲食店・会合
|
15
|
25
|
6
|
2
|
その他
|
6
|
10
|
26
|
9
|
計
|
60
|
100
|
299
|
100
|
(第六波では、疫学調査方法の見直しにより、クラスター発見に偏りが生じている可能性があります。)
これら2つの表を総合すると、第六波では、①10歳未満、10代の子供の感染者が増えている、②子育て世代の30代の感染者が増えている、③保育施設・小学校でのクラスターが増えている、ことがわかります。つまり、第六波では、お子さん達もCOVID-19に感染し、保育施設や小学校でクラスターが発生し、関連するご家庭でも感染が広がっていると考えられます。
このことから、お子さんが通っている保育施設や小学校でクラスターが発生したという情報を得た際には、『自分の家庭にも感染が広がるかもしれない』と想定して徹底的な家庭内感染予防策をとることが重要と考えられます(具体的な対策につきましては、当所ホームページ【論文概要】山形県のCOVID-19第一波 ~山形の新型コロナはどのように広がっていたんだろう?~をご覧ください)。
6. 更新履歴
- 2022.6.2
- 第一波~第五波と第六波の流行状況の比較結果を追加しました。
過去の更新履歴はこちらをご覧ください。
本ページは、山形県衛生研究所および東北大学大学院環境科学研究科が作成し、作成にあたっては山形県内保健所(村山、最上、置賜、庄内、および山形市保健所)および山形県健康福祉部に協力いただきました。